公益社団法人 全国出版協会
書籍の出版市場は、雑誌と比較すると減少幅が緩やかだ。2002年、2004年、2006年は、「ハリー・ポッター」シリーズ(静山社)の新刊が初版200万部超の規模で発売されたことで前年を上回った。 このように、ベストセラー商品の有無によって年間の販売実績の変動は大きい。2021年は、06年以来15年ぶりに販売金額が前年を上回った。毎年成長を続ける児童書や学習参考書などの伸長に加え、返品率の改善、価格の上昇がその要因だ。少子化が進行するなか、児童書や学習参考書は毎年手堅く売れている。
書籍全体の売り上げが逓減するなか、文庫本の販売減が著しい。特に2014年以降、5~6%の減少が続いており、厳しい状況が続く。SNS、ゲーム、動画など無料コンテンツにあふれたスマートフォンの普及が文庫販売に与える影響が大きい。2020年のコロナ禍を機に、東野圭吾、湊かなえ、百田尚樹、佐伯泰英など文庫販売で非常に人気の高い作家が電子化を解禁する動きが相次いだ。
児童書分野は拡大傾向にあり、好調だ。2000年代は『ハリー・ポッター』シリーズ全8巻が爆発的に売れ、ファンタジーブームによって市場は1998年の700億円から2002年に1,100億円に急伸した。ファンタジーブームが去った2010年代前半はブーム以前の水準にもどったが、2015年以降再び上昇し始めた。絵本、学習漫画、学習図鑑、児童文庫などで、ヒット商品が相次いでいるからだ。本来、児童書はロングセラー作品をじっくりと売る、変化は少ないが、手堅い市場と言われてきた。だが、近年はヨシタケシンスケなどの新進作家の台頭や図鑑、学習漫画など大手出版社の新刊活動が活発で、市場は活況を呈している。