公益社団法人 全国出版協会
書籍の出版市場は、雑誌と比較すると減少幅が緩やかに推移してきた。2000年代は「ハリー・ポッター」シリーズ(静山社)などのファンタジー小説やケータイ小説などの文芸書が映像化と相乗してよく売れていた。また、文庫本や新書本などの比較的価格の安い本も大量に売れていた。しかし、2010年代に入ると、書籍の売れ行きも少子高齢化やインターネットの影響が如実に出てくる。コロナ禍で20、21年はいったん売れ行きが上向いたが、22年以降減少が続いており、部数規模も小さくなっている。
書籍全体の売り上げが逓減するなか、文庫本の販売減が著しい。特に2014年以降、5~6%の減少が続いており、22年も前年比5.0%減と落ち込んだ。文庫本は価格の安さが“ウリ”だが、22年の出回り平均価格は711円。12年から86円上がった。12年が02年より37円しか上がっていないのと比べても、ここ10年の高騰ぶりが分かる。読者が手に取りやすい安価な本として親しまれてきた文庫本が、決して安いとはいえない価格帯になりつつある。
児童書推定販売金額は18年からプラス成長が続いていたが21年以降減少に転じた。ただ、長い目で見れば児童書市場は比較的健闘している。児童書の読書対象者である15歳未満人口は減少傾向が続いているにもかかわらず、児童書の販売金額はおよそ900億円前後で推移している。