出科研コラム
IP・コンテンツとしての存在感
2025年の紙+電子の出版市場は前年比1.6%減の1兆5,462億円。紙の出版物はついに1兆円を割り、頼みの電子出版も伸び率鈍化が鮮明になるなど厳しい数字が並んだ。
一方で紙・書籍の販売金額は5,939億円。わずかではあるが4年ぶりにプラスとなった。返品率は大幅に改善して31.9%。ここ50年では1975年に次いで低い値となった。2008~09年は40%を超えていたが、以後改善が進んでいる。今後も、小ロット印刷やPOD等のテクノロジーの発展、利益改善を目指した多様な仕入取引形態が進展していくことにより、さらなる改善が期待される。
25年のエンタメ作品で最大の話題作となった「国宝」。6月に実写映画が公開され、興行収入は180億円を超え、実写歴代最高を22年ぶりに更新。書籍『国宝(上・下)』(朝日新聞出版)も単行本、文庫、愛蔵版、電子版含め累計200万部を突破した。アニメでは「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」が興行収入390億円を突破し、邦画歴代最高の記録を持つ前作「無限列車編」に迫る大ヒットに。コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の全世界累計発行部数は、2億2,000万部(うち海外5,600万部)を突破。25年の邦画は「名探偵コナン 隻眼の残像」「チェンソーマン レゼ篇」を含め興収100億円突破が4作と大豊作だった。
絵本ジャンルでは『大ピンチずかん(3)』(小学館)が圧倒的な人気でシリーズ累計270万部を突破。夏からは全国各地で鈴木のりたけ「大ピンチ展!」が開催、作品世界をより体験できるとSNS等でも話題になった。また、キャラクターグッズやかるたなど関連商品も続々生まれている。
出版物の、単なる映像化・話題書としてヒットするにとどまらない、様々なエンタテインメントの“源泉”としての存在感は、一層増している。(原正昭)
「季刊 出版指標」2026年冬号巻頭言より