出科研コラム
「書店活性化プラン」発表
帝国データバンクは6月3日、2025年1-5月の「書店」の倒産動向についてレポートを発表。この期間の倒産件数は1件、前年同期の11件を下回り、過去最少ペースとなった。レポートでは、「滞在型書店」など、新たなビジネスモデルの確立が進められ、持ち直しの動きを見せている、と分析している。
一方、JPO書店マスタ管理センターの6月時点の状況をみると坪数登録店7,580(24年12月に比べ209減)と、この間も減少に全く歯止めがかかっていない。現状の経営状況だけでなく、未来の展望がなくなった時、倒産という決断に至る場合も多く、不採算店を減らした中で、昨年、経済産業省が発足させた「書店振興プロジェクトチーム」の動きに希望を繋いでいる、という書店も多かったのではないか。
6月10日、経済産業省は
「書店活性化プラン」を発表した。書店関係者等とのヒアリングや会議の内容を反映し、現在の書店が抱える課題と施策が22項目にまとめられた。この間、書店・出版社・取次等出版業界が、経産省や関係省庁と“書店危機”をはじめ様々な業界課題について話し合いが持たれ、意見を交わしたことは、かつてなかったことだ。また、新聞等多くのメディアで報道がなされ、人々が地域の書店の大切さを再認識したことも、大きな価値を持つ。
当然のことながら「プラン」は、今後の書店・出版業界の好転を約束するものではない。すでに第1回が開催された「返品削減研究会」や「書店への RFID 機器の導入支援」など、書店のみならず出版業界全体が覚悟をもって具体的な取り組みを進める必要がある。国や関係省庁との連携は今後も必要だろう。
「プラン」では「その上で、次に取り組むべき課題としては、既に書店がない自治体において、書店をいかに新設・継続し、地域の教育力への貢献を果たしていくか、という点にある。その際、地方創生交付金などの支援主体であり、公共図書館の運営者である市町村の首長の参画が欠かせない」と言及しており、注目に値する。この機運を一過性で終わらせずに、より市民を巻き込んだ運動にするためにも、出版業界は自ら変革することが求められる。(原正昭)
「季刊 出版指標」2025年夏号巻頭言より一部加筆修正