出科研コラム
特集「コミック市場2024」序章にかえて
2024年のコミック市場は 5年連続で過去最高を更新し、7千億円を突破。出版市場(紙+電子)全体におけるシェアは44.8%に達した。
当研究所がコミック市場の統計発表を始めたのは、雑誌コードが5桁に改正された1978年。1,841億円(コミック誌1,386億円+コミックス455億円)、出版全体のシェア15%の市場だった。その後成長を続け、1995年には5,864億円(コミック誌3,357億円+コミックス2,507億円)と紙市場でのピークを迎える。「週刊少年ジャンプ」1995年3・4号が653万部を記録するなど、当時はコミック誌が全盛であった。
『DRAGON BALL』等人気作の連載終了や、ゲームなど子どもたちの娯楽の多様化もあり、翌年からコミック誌が落ち込み、次第に好きなマンガを単行本で買うのが主流になっていく。2005年にはコミック誌とコミックスの売り上げが逆転(同年、紙コミックスは2,602億円のピークに)。そのコミックスも2006年以降減少傾向にある。
当研究所が電子出版市場を初めて発表した2014年のコミック市場は4,456億円(紙コミック誌1,313億円+紙コミックス2,256億円+電子コミック887億円)、電子含む市場全体のシェアは25.9%。以降電子が成長を続け、2019年には電子が紙コミック市場を逆転、2020年はコロナ禍による巣ごもり需要と『鬼滅の刃』など大ヒット作もあり急拡大し、紙も売り上げを伸ばした。
電子は「話売り」「待てば無料」という革新的な販売方法の確立や、縦スクロールコミックの伸長、ストアの値引き・ポイントバックなどの施策や独占・先行配信などにより市場を拡大、成熟期を迎えている。一方、紙市場は2022年以降急激に縮小、コミック市場全体としても踊り場が近づきつつあるようにも見える。しかしこれまでも人気作の完結等で幾度となく停滞期を迎えても、その都度新たなヒット作が誕生し新陳代謝を繰り返してきたのも事実だ。最新の動向について「季刊 出版指標」2025年春号特集をぜひご確認いただきたい。(原正昭)
「季刊 出版指標」2025年春号巻頭言より