公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

地域に貢献する図書館

 全国出版協会の姉妹団体、(公財)高橋松之助記念顕彰財団主催による今年度第17回「文字・活字文化推進大賞」は鳥取県立図書館に決定した(詳細は高橋財団HP)。
 同図書館は1990年に開館。『鳥取県立図書館30周年記念誌』(2021年3月発行)には、開館当初の様子が克明に記録されている。
 「…全国で図書館建築が盛んになり、図書館はかなり整備されてきていたが、書店、特に地方の小さな書店は減り続けていた。県内の書店が存続してほしい、人々が直接新刊を手に取れる町の本屋さんになくなってほしくないというのは私たち図書館員の願いでもあった。…私たちは、県立図書館の豊富な資料費で県内書店の売り上げを支えることが、県民の身近に書店を置くことにつながると考えた。県内書店に県立図書館への納入を呼びかけ、入札などを打診してくる県の財政担当も説得し、県内の書店から一冊一冊購入する現在の購入方法を確立することができた。」
 出版物の推定販売金額のピークは1996年。開館当時、書店の減少が叫ばれることは少なく、むしろ全国的にはレンタル併設の郊外型店舗が増加していた時期と思われる。このような時代から地元書店との共存を重視し、「鳥取方式」と言われる地元書店からの図書購入の原則を現在に至るまで継続している。2024年から本格的に電子書籍サービスを導入したが、こちらも地元書店を通じた契約という徹底ぶりだ。
 「複本問題」に関しては、購入は原則1冊とし、予約数が多いものは市町村への貸出用に2冊目を検討する方針を採用。「本、書店、図書館にまつわるエピソード大賞」や「中学生・高校生ポップコンテスト」など様々なイベントを鳥取県書店商業組合と共催し、図書館と書店双方で協力しながら、地域の読書活動を強力に推進している。
 ビジネス支援など地域の課題解決支援に注力し、「県民に役立ち、地域に貢献する図書館」を長年実践している同図書館の活動は、「図書館・書店等の連携」実践事例の中でも、特に大きな示唆を与えるものと考える。(原 正昭) 「季刊 出版指標」2024年秋号巻頭言より(一部追記)

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