出科研コラム
書店支援について
3月5日、経済産業省の齋藤健大臣は、閣議後の記者会見で大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を設置し、地域文化の重要拠点としての書店に対する支援に乗り出すと正式発表した。書店関係者から期待の声があがる一方、政府からの支援を受けることに対し、批判的な意見も見られた。
直木賞作家の今村翔吾さんは翌日、Xでこの書店支援の報道に関して自身の思いを投稿。出版業界の実情に対し痛烈な批判を含んだ長文の投稿は以下で締められている。「今回のこの支援。本音で言えば、ありがたい話です。しかし、これが本当に必要なところに、意味のある形で行われることを切に願っています。そして、支援の有無に関わらず、我々は自分たちの力で立ち直ることを放棄してはならないと肝に銘じるべきです」。自身も書店経営に携わり、「ホンミライ」の設立や、全国の書店や学校、図書館を回る「まつり旅」を行うなど、人と本を、未来に繋ぐ活動を実践してきた今村さんの言葉を出版関係者は誰も無視することはできないだろう。国民の多くが納得する形で、必要とされる支援が行われることを強く望みたい。
日本出版インフラセンター(JPO)書店マスタ管理センター調べによる登録書店数は3月26日時点で総店舗数10,918店(前年に比べ577店減)、20年間で9,962店減とほぼ半減した。23年末の「書楽」閉店決定から一転、2月10日に八重洲BCが店舗を継承し、“文士の街”阿佐ヶ谷から書店が無くなることが避けられたとしてニュースになったが、これを美談で片付けてはならない。
JPOは1月30日、いわゆる「独立系書店」に対し、「BooksPRO」を公開し、出版情報の取得を支援、データ収集・登録を開始した。出版業界は新規参入に対してもっと門戸を開き、積極的に取り込む必要がある。(原正昭)
「季刊 出版指標」2024年春号巻頭言より