公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

激動の2024年を迎えて

 年始から文字通り激震が走った。1月1日午後4時6分、石川県能登地方を震源とする地震により、石川県内で最大震度7が観測され、石川、富山、新潟を中心に書店にも大きな被害をもたらした。被災者および関係者の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
 本号では23年の出版市場をまとめました。紙+電子出版市場は前年比2.1%減の1兆5,963億円。紙出版物の推定販売金額は同6.0%減の1兆612億円、電子市場は同6.7%増の5,351億円。コロナ禍の巣ごもり需要を味方につけてプラス成長を続けてきた出版市場ですが、22年に引き続き2年連続のマイナスに。伸び率がやや鈍化したとはいえ依然堅調な成長を続ける電子市場と、紙出版物の不振がより際立つ結果となりました。成長分野であるコミックも、映像化による新たなヒット作が多数生まれているなか、紙は前年の大ヒット作の反動や既刊の不振により大きく数字を落としているのに対し、電子はストアオリジナル作品や独占・先行配信、既刊作品の掘り起こしによる成長を続けているのが象徴的と言えます。紙の出版物はこのままでは24年にも1兆円を割り込むことが現実味を帯びてきました。
 リアル書店の不振が続くなか、23年には様々な新たな動きが見られました。取次による無人書店の広がり、PubteXによるRFIDタグの装着と一部書店での実証実験の開始、紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、日本出版販売によるブックセラーズ&カンパニーの設立、業界一丸となり読書の秋を盛り上げた2年目の「BOOK MEETS NEXT」、そしてコンビニ流通の問題等々…。
出版統計の発表とともに激動の24年を注視してまいります。今年もよろしくお願いいたします。(原正昭)

「季刊 出版指標」2024年冬号巻頭言より

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