公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

「子どもたちは読書に親しんでいる」は当たり前のことではない

 『季刊 出版指標』2023年秋号より巻頭言を担当する原です。私は出科研の業務とともに(公財)高橋松之助記念顕彰財団の事務局の仕事も兼務しており、読書活動の顕彰事業を行っています。今年も第16回「朝の読書大賞」「文字・活字文化推進大賞」の受賞者が決定、11月6日(月)に贈呈式を開催します。受賞校に共通することに、学校側の読書推進に対する揺るぎない情熱、「朝の読書」継続による読書の習慣付け、子どもたちの自主性を重んじながらのより幅広い読書への導き、家読の浸透や地域との連携、図書館を活用した授業の強化などが挙げられます。
 飯田一史さんの『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)でも語られている通り、子どもたち(特に小中学生)の不読率、平均読書冊数は2000年以降改善されており、その背後に「朝の読書」などの学校での読書活動や「ブックスタート」、「読み聞かせボランティア」の活躍があるのは間違いないと思います。しかし「朝の読書」は、応募状況や取材を通して、コロナ禍以前から毎日の実施頻度が減少するなど全国的には決して順風ではない、一部の熱心な教職員・学校司書に支えられている面も感じます。教職員の働き方改革、ICT教育の強化、読書ボランティアの高齢化とコロナ禍での一部断絶など現場の様々な変化を鑑みると、このままの状態が続くのかは不透明です。
 さて、10月27日から「BOOK MEETS NEXT 2023」が開催されます。全国の書店に足を運んでもらうのと同時に、是非ともこの機会に地域の学校の読書活動や読書ボランティアについても関心を向けていただきたい。市民が声をあげ、応援することで「読書の生態系」が広がっていく、そんなふうに願っております。(原正昭)

「季刊出版指標」2023年秋号 巻頭言より

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