公益社団法人 全国出版協会
ビジネス書の売れ行きを見ると、ここ数年、投資などマネープランに関する書籍が大きく伸びている。特に2020年のコロナ禍以降の伸長が顕著だ。コロナ不況による失業やリストラ、給料が増えない、年金支給の不安など、お金に関する悩みを抱える人は多い。このため株式投資、資産運用、節約、貯蓄、副業などへの関心が高まっており、関連書のヒットが続出している。
ヒットの背景には、YouTubeでの書籍紹介や著者の動画チャンネルの視聴を機に書籍を買い求める動きがある。特に勢いがあるのが朝日新聞出版の書籍。YouTuberとして人気が高い両@リベ大学長の『本当の自由を手に入れるお金の大学』(20年刊)は22年4月に100万部に達した。お金を「貯める・稼ぐ・増やす・守る・使う」をそれぞれ解説し、動画の人気と連動し、長期的に売れ続けている。著者のYouTubeチャンネル「両学長 リベラルアーツ大学」の登録者数は200万人を超えた。『今さら聞けないお金の超基本 ビジュアル版』(18年刊)は、同社の実用書編集部が手がけたビジュアル重視の構成が評判で、50万部超に。iDeCo、NISAなど投資情報に特化した『今さら聞けない投資の超基本 ビジュアル版』(21年刊)も初版2万3千部が20万部に迫る勢いだ。
このほかでは、お笑い芸人兼IT企業役員の厚切りジェイソンによる『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ、21年刊)が動画・テレビでの紹介でブレイク。ロングセラー『金持ち父さん貧乏父さん 改訂版』(筑摩書房、13年刊)も00年の第1版の刊行以来、20年以上にわたってお金の本のバイブルとして売れ続けている。
投資と言ってもNISAや不動産投資、米国株や仮想通貨など種類はさまざまで、特に初心者はどの投資を選ぶか、判断が難しい。多数配信される動画の情報だけではなく、書籍を購入して読み込んで、じっくり検討したい、というニーズを感じる。
22年4月から、新学習指導要領に基づいた高校家庭科の授業が始まり、その中で、金融教育の授業が開始された。家庭科の授業といえば裁縫や調理実習が思い浮かぶが、投資信託など、基本的な金融商品の特徴も高校で学ぶことになるのだ。お金に関する本は、今後さらに新しい切り口の書籍が増え、求められていきそうだ。(久保)