公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

Webやアプリ連載のコミックで紙の単行本でも売れているものは?

 今や出版市場(紙+電子)の4割近くまで占有率を伸ばしているコミック市場。これまではコミック誌で連載した作品を単行本化するのが一般的だった。今では読者と作品が出会うタッチポイントは多様化し、コミック誌だけでなく、ネットやSNSで作品に出会うことが多くなっている。そしてWebやアプリ発の作品が単行本化され、ヒットする例が続出している。

 では電子媒体初出で、紙のコミックスでもヒットしているのはどういった作品か。2021年1~11月期の単巻ごとのランキングトップ15(「出版月報」2021年12月号掲載)を見ると、多くは17年頃以降にウェブサイトやマンガアプリ上で無料連載されたものだった。

 集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+」連載作品からは5作品がランクイン。『地獄楽』(18年1月~21年1月)、『SPY×FAMILY』(19年3月~)、『怪獣8号』(20年8月~)、『ダンダダン』(21年4月~)と毎年のように同アプリの無料連載から紙コミックスのヒットが生まれている。特に『SPY×FAMILY』は20年12月発売の単行本第6巻が初版100万部を記録したことも記憶に新しい。また21年7月19日に長編読み切り形式でアップされた『ルックバック』はSNS上で大きな反響を呼び、「このマンガがすごい!2022」(宝島社)のオトコ編第1位にもなった。

 また『わたしの幸せな結婚』(スクウェア・エニックス)や『とんでもスキルで異世界放浪メシ』(オーバーラップ)など「小説家になろう」発作品のコミカライズ、『宇崎ちゃんは遊びたい!』(KADOKAWA)や『可愛いだけじゃない式守さん』(講談社)のようにTwitter上に作家個人が投稿していた作品、他にもpixivやニコニコ動画上にアップされていた作品からのヒットもあった。

 デジタル上では無料で読める作品が、有料の紙の単行本になっても売れる。良い作品はお金を出しても手元に置いておきたい、そんな読者がかなりいることを示している。今後ますます電子媒体に連載される作品は増えていくだろう。さらにいま、注目を集めているのが、スマホに最適化した縦長のコマにフルカラーの「縦スクロール漫画」(WEBTOON、SMARTOONなどを含めた総称)で、コミック業界以外からの参入も相次いでいる。22年もコミックを取り巻く市場から目が離せない。(水野)

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