公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

コミックエッセイの刊行続々と

作者が日々の生活で思うこと、感じることなどを字義どおりエッセイ的に綴った漫画、コミックエッセイの刊行が活発だ。コマ割りなど漫画としての体裁にとらわれない自由な作風が特徴で、キャラクター化された愉快な人物が登場する。人間関係や育児、恋愛、旅などをテーマにしたものが多く、女性を中心に支持を集めている。

コミックエッセイが注目されるようになったのは、90年代はじめ。西原理恵子の『まあじゃんほうろうき』(竹書房、90年)『恨ミシュラン』(朝日新聞社、93年)や、田島みるく『あたし天使あなた悪魔』(婦人生活社、92年)、高橋陽子『陽子ママの子育てアタフタ日記』(同、93年)、青沼貴子『ママはぽよぽよザウルスがお好き』(同、93年)、石坂啓『赤ちゃんが来た』(朝日新聞社、93年)などの育児エッセイあたりから出発する。

その後、テレビドラマ化された『だめんず・うぉ~か~』(倉田真由美、扶桑社、01年)や、『ダーリンは外国人』(小栗左多里/トニー・ラズロ、メディアファクトリー、02年)など、漫画家が描いた自伝的エッセイのヒットが相次いだ。「ダーリンは~」シリーズは、3冊合計で200万部を突破するなど突出した売れ行きを示している。

現在では、漫画家以外の著者の作品も目立つ。『ツレがうつになりまして』(細川貂々、幻冬舎、06年)や『片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術』(池田暁子、文藝春秋、07年)、『結婚一年生』(入江久絵、サンクチュアリ・パブリッシング、07年)などは、イラストレーターが著者。また08年テレビアニメ化もされた子育てコメディ『うちの3姉妹』(松本ぷりっつ、主婦の友社、06年)や、オタクなサラリーマンの日常を描いた『ぼく、オタリーマン。』(よしたに、中経出版、07年)、『くるねこ』(くるねこ大和、エンターブレイン、08年)などは人気ブログを書籍化したもの。ネット上にはコミックエッセイ専用の無料サイトもあり、固定ファンも多いという。『30点かあさん』(たかぎなおこ、メディアファクトリー、07年)、『独りでできるもん』(森下えみこ、同、06年)など、人気作品はそこから次々と書籍化されている。

通常のコミックスと比べると目立たないが、10万部を超すヒット作が相次いでいるコミックエッセイ。魅力的なキャラクターを通して親しみながらさらりと読めるその手法は、新たな読者層を掘り起こし、しっかりと一ジャンルを築いているようだ。

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