公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

時代小説、売れている著者は

売れ行き良好書のランキング(ベストセラーリスト)は方々で発表されているが、例えば小説でも、「ミステリー」や「恋愛小説」などジャンルを限定したランキングを見つけるのは難しい。内容別のランキング作成には時間のかかる手作業が伴うため、なかなか出しにくいというのが現状なのだ。

その内容別売れ行き良好ランキングを、今回「時代小説」ジャンルに絞って作ってみた。集計は著者毎、調査対象期間は07年1~12月期、( )内は期間内に売れた代表作だ。

  1. 佐伯泰英(『居眠り磐音江戸双紙』双葉社 、『密命』祥伝社)
  2. 藤沢周平(『風の果て』『蝉しぐれ』文藝春秋)
  3. 司馬遼太郎(『坂の上の雲』文藝春秋、『燃えよ剣』新潮社)
  4. 池波正太郎(『夜明けの星』『鬼平犯科帳』文藝春秋)
  5. 畠中恵(『しゃばけ』『ねこのばば』新潮社)
  6. 浅田次郎(『憑神』新潮社、『輪違屋糸里』文藝春秋)
  7. 宮部みゆき(『あかんべえ』新潮社、『あやし』角川書店)
  8. 鳥羽亮(『はぐれ長屋の用心棒』双葉社、『介錯人・野晒唐十郎』祥伝社)
  9. 平岩弓枝(『御宿かわせみ』文藝春秋、『はやぶさ新八御用旅』講談社)
  10. 鈴木英治(『口入屋用心棒』双葉社、『父子十手捕物日記』徳間書店)
  11. 山本一力(『欅しぐれ』朝日新聞出版、『あかね空』文藝春秋)
  12. 澤田ふじ子(『公事宿事件書留帳』『雁の橋』幻冬舎)
  13. 宮尾登美子(『天璋院篤姫』『東福門院和子の涙』講談社)
  14. 宇江佐真理(『卵のふわふわ』講談社、『桜花を見た』文藝春秋)
  15. 松井今朝子(『吉原手引草』幻冬舎、『銀座開化おもかげ草紙』新潮社)

時代小説は文庫が中心の市場であるため、上記リストもほとんどが文庫。1位の佐伯泰英は文庫書き下ろしが基本で、推定販売部数・金額とも、2位以下に倍以上の差をつけている。2位の藤沢周平は映像化原作となる機会も多く、ここ数年女性層などに人気が急上昇中だ。3位の司馬遼太郎は豊かな知識に基づく歴史観に根強いファンが多く、4位の池波正太郎もまた変わらぬ人気を誇っている。異色は5位の畠中恵。ファンタジックな作品が多く、ライトノベル化する最近の時代小説を象徴する存在となっている。

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