公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

年末はミステリーがすごい!

出版界にはいろいろな季節商品がある。春には新学年の学参や学年誌、夏には文庫フェア、秋には旅・グルメ関連、冬には年賀状関連書などが代表的なところだろうか。季節感があまりないと見られがちな文芸書にも、実はシーズン商品がある。年末のミステリ関連書だ。

なぜ年末にミステリなのかと言えば、年末はミステリガイド本の発売が相次ぐからである。もちろんその背景には「年末年始の休みくらい、ゆっくり本を読んでみてはいかが?」という出版界からの提案がある。その一助としてのミステリガイド本なのだ。

今年刊行されたミステリガイドには、

また雑誌の特集記事として

などがある。

ジャンルを特化したガイド本は、今でこそ色々なものが発売されているが、ミステリガイド本はその走りといえる存在。最も有名なミステリガイドである「このミス」は、今年刊行20周年を迎えている。これを記念し、同書は昨年12万部だった初版部数を今年は20万部とし、価格も680円から500円と値下げしている。また今年からは、ミステリガイド本に早川書房が参入した。同社は40年以上続くミステリ専門誌『ミステリ・マガジン』の出版社として知られている。

ブームが去って後のミステリはコアなファン層、つまり、ミステリオタクに支えられた堅い市場となっている。ミステリガイド本はオタクを相手に「この面白い作品をあなたは知っていましたか?」と挑戦するわけだから、その中身は当然濃く、マニアックになりがちだ。しかし近年の傾向として、ミステリガイド本は一般読者にも開かれた作りに変化してきており、オタク色は薄まる傾向にある。

オタクを唸らせつつも、一般読者への門戸は広げておく。ミステリガイドはいま、絶妙のバランス感覚で編集されているのだ。

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