公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

サービス拡大で需要が増える図書館

公共図書館は近年、その数と利用者数が増加している。その伸びが大きくなってきたのは97年前後から。全国の図書館数は97年の2,450館に対し06年は3,082館と632館増。個人貸出登録者数は97年3,061万人、06年4,855万人と1,700万人以上増加している。同じように館外貸出冊数を見ても97年4億3,000万冊、06年6億2,000万冊と10年で2億冊近い伸びだ。貸出冊数自体はここ2年ほど停滞しているが、その他は変わらず伸びている。(日本図書館協会調べ)。

なぜ図書館の利用者は年々増えているのだろうか。地方自治体の公共図書館が増え、住民が利用しやすくなったことも増化した要因だが、不況の影響も大きい。利用者数が拡大していった97年前後は不況の真っ只中。公共図書館は無料が原則だ。本にはお金をかけず、図書館で無料で借りよう、という利用者が多かったのだろう。

さらに図書館のサービスが飛躍的に良くなったのも利用者増と大きく関係がある。例えば07年5月にリニューアルオープンした千代田区立千代田図書館は、公立図書館としては最も遅い午後10時までの開館を実現した。オフィスが多い千代田区は昼夜の人口差が約20倍もあり、仕事が終わったあとにも気軽に利用してもらおうと以前の19時閉館から3時間延長した。

この千代田図書館はさらに日本初の図書館コンシェルジュを配置している。コンシェルジュとは「案内役」の意味。本の問い合わせに答えるだけではなく、図書館付近の散歩コースやレストランの案内まで千代田区との連携で行っている。

日曜・祝日開館、自動貸出機の設置、インターネット対応の電子資料閲覧席やパソコン持ち込み席の導入、子育て情報支援室、ビジネス支援サービス、コンビニ返却が可能など図書館が新たに行っているサービスは年々拡大している。

出版物の販売部数、金額は年々落ち込んでいるが、図書館に関する数値は安定しており、本の需要自体は落ちていないことがわかる。図書館は本だけではなく、CDやDVDなども扱う館が最近は多く、時間つぶしにも最適の場。時間がたっぷり出来た中高年層の図書館利用率は今後ますます高まっていくと見られる。老人にもやさしい「くつろぎの空間」として図書館の価値はさらに高まっていくのではないだろうか。

メニュー