公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

コミックスと映像化

最近何かと耳にする機会の多い、コミックス(単行本)の映像化情報。テレビの番組改編期や新作映画紹介の情報等には、必ずといってよいほどコミックス原作作品が登場している。テレビアニメ化、実写ドラマ・映画化などのメディアミックスにより、コミックスの売り上げに大きく影響を及ぼす傾向は07年も続いている。

かつては、テレビアニメ化をきっかけにコミックスの販売増へと繋がっていくのが一般的だった。だがここ数年目立つ現象は、少女コミックスを中心とした実写化(ドラマ化・映画化など)によるメガヒットだ。特に05年の『NANA-ナナ-』(集英社)の映画化、06年の『のだめカンタービレ』(講談社)のドラマ化以降の大ブレイクは記憶に新しい。

よって現在放映されているテレビドラマ作品は、コミックスが原作という番組が非常に多い(07年7月スタートのドラマでは8作品がコミックス原作)。コミックス原作の場合は、すでに絵というイメージが確定した形でオリジナルがある上、ストーリー性が高いことから映像化しやすいという利点がある。また、特にテレビ放映開始後は、作品そのものを知らなかった新規読者がつくため、初速の売上率が急速に伸びる。特に巻数ものの作品では1巻から動き出すため、既刊の売れ行きが一気に増すというメリットがある。

性別や年齢を越えた新しい読者の獲得が、映像化によってひろがっている。

映像化はテレビ局や出版社など双方に大きな収益をもたらすため、今後も拡大基調は続いていくだろう。だが一方で、作品の紹介媒体であるコミック誌の売り上げ不振、部数減は止まらない。07年も大部数でコミック誌が数点創刊されたが、いずれも苦戦している。しかし不振ながらもコミック誌の休刊は目立っていない。連載作を単行本でヒットさせ、雑誌の不振をカバーしようという狙いがあるためだ。コミック誌の販売不振を、映像化なども絡めて単行本の刊行で利益を得ていく、コミック市場は現在このような構造となっている。

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