公益社団法人 全国出版協会
文芸書が伸び悩む中、いま唯一元気がいいと言えるのがケータイ小説だ(ケータイ小説については本コラム「ケータイ小説とは」を参照)。
ケータイ小説は、スターツ出版が『Deep Love アユの物語 完全版』(Yoshi、02年12月)で先鞭をつけたもの。この「Deep Love」シリーズがブレイクしたため、同社では次々と新しい作家を発掘し作品を書籍化。これらがまた軒並み大当たりしたため各社が参入し、現在のように、ひとつのカテゴリを形成するに至ったという経緯がある。
刊行出版社の増加とともに、コンテンツ(小説そのもの)の供給源も広がってきた。これまでは無料ホームページサイト「魔法のiらんど」でアクセス数の多いケータイ小説が書籍化されてきたが、最近では同種の「フォレストページ」からの書籍化や、スターツ出版が無料小説投稿サイト「野いちご」を創設するなどの動きもある。また昨年は「日本ケーイ小説大賞」(主催:毎日新聞社、スターツ出版、魔法のiらんど)の創設と、受賞者のデビューなどもあった。
このように大きく広がりを見せているケータイ小説だが、現在どのくらいの点数が刊行されているのだろうか。
正確なカウントは難しいが、当研究所のデータで調べてみたところ、(1)『Deep Love~』が刊行された02年12月から07年6月の間に、(2)単行本で刊行された文芸書で、(3)取次窓口経由の新刊の中に、52タイトル・58点のケータイ小説が確認できた(内藤みかや、Yoshi『翼の折れたエンジェル』(双葉社)など、広義のケータイ小説も含む)。
ケータイ小説はケータイ画面同様横書きで、行間が広いのが特徴。恋愛を中心に若者文化を色濃く反映しているものが多いため、読者層(若い女性層が中心)が固定化している。一般的な文芸書を読む人がケータイ小説を読む事は少なく、また、逆の例もあまり見られないのが現状だ。ほぼ全てのタイトルにおいて、帯やポップなどで“ケータイ小説”であることを明示している。無名の新人作家でも初版部数は5~10万部というのが現在の相場で、一般的な文芸書よりも部数規模が大きくなっている。