公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

地元情報満載、地域密着ガイド本

八王子、多摩、船橋、習志野など人口の多い東京周辺都市部を対象に、飲食・レジャーから歴史、文化まで地域密着の情報を市区単位で詳しく載せたガイド本の刊行が相次いでいる。観光地を中心としたガイド本は数多く出版されてきたが、なぜ今、市区町村を中心としたガイド本が増えているのだろうか。

きっかけは、03年に刊行された「るるぶ練馬区」(JTBパブリッシング)。「行政の作る区のPRを兼ねたガイドブックはつまらない」という住民の声を生かし、目立った誘客地の少ない練馬区が出版社に交渉。

要請を受けたJTBパブリッシングは最初は難色を示したが、観光誌ではなく住民の情報誌として作ろう、と区と協議を進めた。

03年11月の発売後の反響は大きく、初年度で5万部を販売。練馬区には全国の自治体から問い合わせが相次いだ。その影響で「るるぶ」から自治体協力のガイド本が続々と発行され、07年6月現在、港区、杉並区、足立区など東京23区が7誌、八王子市、川崎市、静岡市など他の地域が6誌、計13誌刊行されている。

行政が情報を提供し、出版社がガイド本を発行するパターンでは利点も多い。本来ならば役所などに置かれるだけでそれ以上の広がりがなかった市の刊行物が、書店でより多くの読者の目にふれ、好調ならば重版がかかるという利点がある。読者拡大によって行政、市民、出版社、地元企業それぞれにメリットが生まれている。

このような成功もあって、行政と提携せず、出版社独自でマニアックな地元情報を掲載したガイドムックの刊行も相次いでいる。「るるぶ」以外では「まっぷる」(昭文社)や「ウォーカームック」(角川クロスメディア発行/角川グループパブリッシング発売)といったムックシリーズから刊行が活発だ。

「枚方ウォーカー」(角川クロスメディア発行/角川グループパブリッシング発売)や「るるぶ船橋 市川」(JTBパブリッシング)などは、増加している新築マンションに越して間もない若い夫婦や中高年層など幅広い層の読者から支持されている。

週末に近所の隠れた名店で食事をしたい、地元の歴史情報を知りたい、など広範囲のタウン情報誌では得られない地元情報を掲載している点が読者に受けている。各社が取りあげる地域も首都圏にとどまらず、地方のベッドタウンなどへと拡大傾向だ。

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