公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

子どもの読書のエクステンション

「朝の読書」運動を始めとする読書推進活動が実を結び、読書の習慣を身につけた子どもが増えてきたようだ。子ども向けの読み物として、現在最も一般的なのは児童文庫。新書サイズで価格は700円程度で、子どもにとって手ごろなつくりと言える。

代表的な児童文庫には「青い鳥文庫」(講談社)、「偕成社文庫」(偕成社)、「ポプラポケット文庫」(ポプラ社)、「フォア文庫」(岩崎書店、金の星社、童心社、理論社)などがある。子ども自身の購入に加え、学校図書館での需要増もあり、ここ数年で急速に刊行点数が増加している。

売れ筋の中心は書き下ろしエンターテインメントで、人気シリーズを多数抱える「青い鳥文庫」などは、右肩上がりの高成長を続けているという。児童文庫のメイン読者は小学校高学年~中学1・2年生。しかし中学生(ティーンネイジャー)くらいになると、徐々に児童文庫を卒業していくそうだ。

このティーンの読書は、児童書では幼すぎるが一般書はハイレベル、つまり、児童書と一般書の中間に位置しているといえる。しかしこの「ティーン向け」を謳った書籍は意外に少なく、書店店頭でのコーナー設置も遅れているのが現状だった。

このように、児童書のウィークポイントとも言えるティーン向け。しかし急速に高まったニーズに応えるように、ここ数年各社から刊行が相次いでいる。

現在慣行されている主にティーンを読者対象としたシリーズは「YA! ENTERTAINMENT」(講談社)、「Dreamスマッシュ!」(ポプラ社)、「エンタティーン倶楽部」(学習研究社)、「Y.A.@ Books」(小峰書店)など。また、今年に入ってからも「ミステリーYA!」(理論社)や、「はじめての文学」(文藝春秋)などが刊行されており、この5月には岩崎書店も「YA!フロンティア」を創刊予定だ。人気の児童文庫のテイストを受け継ぎつつも、造本や内容・テーマなどをティーン世代に合わせたつくりで、大人が読んで楽しめるものも多く、クオリティは高い。

子どもの読書推進は、言葉を学ぶ、感性を磨く、創造力を育む、生きる力を身につけるなど、子どもの「人間力」を高めるためにも非常に重要で、出版の意義は大きい。

少子化は依然進行しているが、ティーン向けの書籍は、これからますます社会に必要とされるようになっていくだろう。

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