公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

既存の雑誌が「創刊」とは、これ如何に

雑誌が、表紙で突然「創刊号」と謳うことがあります。

これまでもずっと刊行されていたのに、なぜ?と戸惑う人も少なくないのではないでしょうか。 実はこれ、創刊は創刊でも「独立創刊」といわれるものです。まったく新しい雑誌が出る「創刊」と違って、これまで「増刊」「別冊」「ムック」といった雑誌の派生刊行物として刊行されていたものが、独立した雑誌として“一本立ち”することを意味しているのです。

一本立ちとはこの場合、その雑誌独自の「雑誌コード」を取得することを指します。「雑誌コード」は雑誌の誌名(題号)ごとに発行される流通管理コードで、これがないと雑誌専用の流通システムに乗ることができません。「雑誌コード」取得には、その雑誌が定期刊行物としてきちんと成り立つかが重要になります。2、3本出ただけで休刊してしまうような雑誌は定期刊行物であるとはいえず、わざわざ「雑誌コード」を設定する意味がないからです。

「雑誌コード」取得は、定期刊行物としての媒体力が認められたということでもあり、雑誌にとってはひとつのステータスともなっているわけです。

ところで、一口に雑誌といってもいろいろな種類があります。

まず、定期的に刊行される「定期誌」、つまり「本誌」。雑誌といえば、基本的にこの「本誌」を指します。

そして、「本誌」以外に「ムック」「増刊」「別冊」といった不定期刊行物があります。「コミックス(単行本)」も、一部を除いて雑誌扱いです。これらの商品にはみな、必ず「雑誌コード」が付いています。そもそも本というのは「書籍」と「雑誌」に大別されますが、出版業界では「雑誌コード」が付されたものを厳密に「雑誌」と区分しているのです。一見雑誌のように見える本も、このコードがなければ「雑誌」ではなく「書籍」ということになります。

また、上記はみな取次ルートを経由した一般出版物の雑誌であり、これ以外にも「直販誌」や「フリーマガジン」などがあります。出版科学研究所では、基本的に取次ルート経由の雑誌コードが付いたものを「雑誌」として統計対象としています。

さて、雑誌の派生刊行物である「増刊」「別冊」とは、よく聞く言葉ではありますが、具体的にはどのようなものでしょうか。

「増刊」とは、定期誌(本誌)以外に臨時で発行する号のことで、「臨時増刊」「特別号」とも呼ばれます。

「別冊」は、定期誌(本誌)とは別に編集し、本誌に付随して刊行する雑誌のことです。本誌の付録となっている場合は「別冊付録」といいます。

大雑把なことをいえば「別冊」は本誌の+α的内容のもので、「増刊」は本誌とあまり関連してない内容のもの、ということになるわけです。とはいえ今日の雑誌業界では、その差というのは明確でなくなりつつあり、使い分けられるケースが少なくなっています。「増刊」「別冊」ともに、本誌と関連あるなし問わず非常に様々なものが刊行されており、両方とも単に雑誌の派生刊行物という意味しか持たなくなっているのが現状です。

そして「増刊」や「別冊」、「ムック」などでいろいろな内容をテストし、その中から売れ行き良好だったものを独立創刊させるというのが、昨今の雑誌創刊ではスタンダードな手法ともなっています。

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