公益社団法人 全国出版協会

出版科学研究所

出科研コラム

新書のはなし(2)

ノンフィクション系新書は大きく教養新書、ブックス系(ハウツーもの)、ハンドブック(スリムサイズで実用的なもの)、その他(ノンフィクション読み物など)の4種に分けることができます。しかしここ数年は教養新書に大ヒットが相次いだため、「新書=教養新書」というイメージを持つ人が多いようです。それだけ教養新書の名前が浸透しているということでしょう。

教養新書の歴史は、1938年の「岩波新書」の創刊まで遡ります。教養新書の代名詞にもなっている岩波新書は、これまで2千5百点を超える新刊を世に送り出して来ました(2006年現在)。戦後になって「角川新書」(50年)、「文庫クセジュ」(51年)などが次々と創刊され、第1次新書創刊ブームが起こります。55年時点で90を超える新書シリーズが店頭に並んでいたとも言われます。

なかでも、54年創刊の「カッパ・ブックス」は“創作出版”として、マスプロマスセールの代表的存在となりました。60年代に入ると「ブルーバックス」(63年)、「プレイブックス」(63年)、「ワニの本」(68年)が創刊され、第2次新書ブームとなります。

一方、教養新書は62年に「中公新書」、64年に「講談社現代新書」が創刊、岩波新書と合わせて“教養御三家”と呼ばれ、以降の教養新書界をリードする存在となっていきます。

70年代から80年代にかけてはブックス系の勢いがまさり、『冠婚葬祭入門』『ノストラダムスの大予言』『悪魔の飽食』『プロ野球を10倍楽しく見る方法』など、ミリオンセラーが相次ぎます。しかし80年代後半になると文庫ブームに押され、勢いは急速に衰えました。

それに対し教養新書は、90年代に入ると『ゾウの時間、ネズミの時間』、『「超」整理法』、『大往生』、『日本語練習帳』などの大ヒットが続出しました。バブル経済がはじけ、地味で堅実なテーマが安価に手に入る教養新書が、時代の空気にマッチしたといえるでしょう。

こうしたヒットを背景に、教養新書の転機となったのは98年の「文春新書」の創刊です。文春新書は従来の教養新書の堅いイメージを一変、現在主流となっているライトな教養読み物の流れを決定付けました。これ以降「集英社新書」「宝島新書」「光文社新書」などが次々創刊され、第3次新書ブームが起こりました。しかし、類似出版が多く売れ行きは低迷し、ブームも終焉かと思われた03年に創刊されたのが「新潮新書」でした。『バカの壁』の累計400万部超をきっかけに、新書は再び活力を取り戻したのです。

ちなみに、05年に刊行された教養新書は32シリーズ1,018点。ノンフィクション系新書の新刊の、およそ7割を教養新書が占めています。成功の基準は5万部で、これが10万部になるとベストセラー、30万部で大ヒットと言えるそうです。

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